類を見ない“賛否両論”の映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の世界観

こちらの作品は今までに類を見ない“賛否両論”の映画として大きな話題になりました。
今までの中で最高のの映画という方もいる反面、「二度と観たくない、辛くて途中から見られなかった」と感じる方も。

ではなぜ、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は賛否が大きく別れるのかということと映画の世界観や考察などを考えていきましょう。

「負の感情」」が強いアンハッピーエンドな物語 本作のあらすじは、このようなものです。

60年代のアメリカ。セルマは女手ひとつで息子のジーンを育てながら工場で働いている。

彼女に対して理解と愛情を持つ人々に囲まれ満ち足りた生活を送っていた。
ただ一つを除いて。彼女は遺伝性の病のため視力が失われつつあり、ジーンも手術を受けない限り同じ運命を辿ってしまうのだった。

そのために、内職もしてジーンの手術費用を貯えていた。が、ある日工場を解雇されてしまい、貯めていたお金まで盗まれていた……。

歌手ビョーク主演のドラマ。
カンヌでパルムドールと女優賞を受賞。

allcinema ONLINE より引用

つまり、主人公は遺伝性の病気により、徐々に視力がなくなり仕事をクビに。

そしていずれ自分と同様に視力を失う息子をお金がないから救えない…

ーーという救いようのない状況になります。
通常の映画はそれでも、主人公が数々の逆境を乗り越え最終的には幸せな結末が待っている場合が多いのですが、この作品はそうでありません。

こんな過酷な状況下にある主人公はさらに“最悪”の状況に追い込まれていきます。
文字に起こし、客観的に観るととこの物語は、本当に不幸な物語だと思います。

ダンサー・イン・ザダーク予告編

主人公の“妄想”ミュージカル

映画の中では主人公が、ミュージカルシーンになだれ込んでいくことがあります。しかし ディズニーのようにそのミュージカルが現実とリンクしている訳ではなく、全てが主人公の“妄想”であり、辛い現実から逃れ、陽気な歌と踊りなどの非日常的な妄想世界に逃げ込む描写などではないかと考えられます。

逃げ込んでいるようにも思えます。 さらに彼女はその後、最悪な事件を起こしてしまいますが、その際も妄想のミュージカルが再度登場します。

どのシーンもミュージカルになだれ込む流れがあまりにも自然なので、“主 人公の頭の中を覗いているような”不思議な感覚になっていきます。

ぜひ妄想のミュージカル中で歌われている歌詞や、主人公の息子のセリフに注目して聞いてみることをオススメします。

他人にはわからない価値観“盲目的(Blindly)”と言われる言葉があります。

主人公はこの言葉の通り、息子の視力回復手術の成功以外は“どうでもいと思うほど盲目的に”願っています。

そんな主人公から私は“愚か”というよりむしろ、“純粋さ”を感じました。

彼女の“盲目的な愛”は、人によっては自己愛とも取れるかもしれません。
ですがその感情を、私は否定的に捉えることはできませんでした。

“客観的に主人公は不幸でバットエンディング”と前述しましたが、それはあくまで客観的にみた場合であり、主人公の視点で見たらどうだったのでしょう。

間違った行いの結果、最悪の事件を起こす訳ですが“愛する息子のため、盲目的にただ息子のためを考え行動できた”という点では、(彼女自身の主観では)幸せだったとも感じられます。

暗く重い、映画であることが重要である

人には“身の毛のよだつようなホラー”や“この世のものとは思えないような残酷な話”を知りたいという欲求もあります。

その物語で引き起こされる恐怖などの感情は“負”であり、どうせなら経験しないほうがいいもののはずなのに……なぜ、そのような映画を観たいと思うのでしょうか。

それは、 “現実”に立ち向かうことへの力が得られるからなのではないでしょうか。 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はこのうえなく暗く、重い気分にさせてくれる映画です。

そうであるからこそ、観客は自分の幸せを感じられ、また主人公のような誤った行動をしな いようにと、考えかたを改めることができると思うのです。

予告編第2弾

映画が“人の心を動かすためにある”とすれば、このように“負”の感情を呼び起こしてくれる映画もあってほしい、と思います。
もし、世の中の映画が夢いっぱいのハッピーエンドの物語ばかりであるなら、引き起こされる感情は一辺倒なものになってしまうのですから。

なお、ラース・フォン・トリアー監督は、『奇跡の海』、『ドッグヴィル』、『ニンフォマ ニアック』といった多くの作品で、女性が精神的かつ性的に虐げられる作品を手がけていま す。

「なんて悪趣味な監督なんだ」、「女性が嫌いなのか」、と思う方もいるかもしれませんが……実のところ、トリアー監督はこうして不幸な目に合う女性を主人公にすることで、女性の気持ちに寄り添っている、映画界随一のフェミニストでもあると思うのです。

映画は、観る人の心を動かしてくれる媒体です。 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、映画全体を貫く音楽と、独特の映像表現も相まって、“自分の暗い気持ちを映画の中に溶け込ませることができる”稀有な作品。
その映画体験は、きっと貴重なものになるはずです。

アイスランドの人気女性歌手ビョークを主役に据え、手持ち撮影主体のカメラワークやジャンプカットの多用によるスピーディーな画面展開、不遇な主人公の空想のシーンを明るい色調のミュージカル仕立てにした新奇な構成の作品である。

高い評価を得て、2000年の第53回カンヌ国際映画祭では最高賞であるパルム・ドールを受賞し、ビョークは映画主演2作目で主演女優賞を獲得した。音楽もビョークが担当し、特にトム・ヨークレディオヘッド)とデュエットした主題歌『I’ve seen it all』はゴールデングローブ賞およびアカデミー賞の歌曲部門にノミネートされるなど高く評価された。https://ja.wikipedia.org/wiki/ダンサー・イン・ザ・ダーク

https://ja.wikipedia.org/wiki/ダンサー・イン・ザ・ダーク

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