安楽死は楽に死ねるのか?

―安楽死―

この言葉に、あなたはどんなイメージをもっているだろか?

今回お伝えしたいのは、安楽死を追い続ける日本人ジャーナリストが語っている、安楽死への以下の考察だ。

・安楽死は安易に捉えていいものではない

・日本は安楽死という言葉に、社会問題を背負わせている

【安楽死は安易に捉えていいものではない】

-そもそも、安楽死というネーミングが安楽すぎる。―

こう語るのは、著書『安楽死を遂げるまで』『安楽死を遂げた日本人』等の著者である、ジャーナリストの宮下洋一(以下、宮下氏)である。

宮下洋一

1976年、長野県生まれ。18歳で渡米し、米ウエスト・バージニア州立大学外国語学部を卒業。その後フランスやスペインを拠点に世界各地を取材している。

<https://bunshun.jp/search/author/宮下%20洋一>参照

宮下氏は、インタビュー「安楽死は日本人に希望をもたらしてくれるのか」の中で、日本での安楽死に対しての考え方をこう述べている

「日本ではそもそものネーミングが、暗に”楽に死ねる”というイメージが広まってしまっているのではないか?」

安楽死が合法化されているスイスで、初の安楽死を遂げた日本人を追った宮下氏は、スイスで行われている安楽死は「幇助による自殺」だという。

つまり、安楽死を施した人は、「自殺の手助けをした」という位置付けだ。

だからこそ、安楽死を遂げられる人の条件や審査はとても厳しく行われ、誰でも安楽死が認められる訳ではないという。

しかし、その事実を知ることなく、”スイスへ行けば安楽死できる”という安易な考えでスイスに訪れる外国人が後を絶たない現状がある。

※スイスでは1942年から、安楽死が合法化されている。2020年3月現在、安楽死を法的に認めている国の中で、外国人が安楽死できる国は、世界でスイスしかない。

※スイスでの安楽死の現状についてまとめているメディアサイトがあるので、詳しく知りたいという方はコチラ

この事実から”安楽死”は、ただ単に「お金を払えば楽に死ねる」という認識が間違っているということに気づかされる。

【日本は安楽死という言葉に、社会問題を背負わせている】

-日本では、“安楽死を希望する人の増加”の背景にある社会問題に目を背け、そのしわ寄せを安楽死に背負わせている-

こうインタビューで語っていた宮下氏は、彼の著書、「安楽死を遂げるまで」の中で、安楽死に対する彼の考えを書き記している。

宮下氏はもともと、日本での安楽死に対して否定的な考えを持っている。

しかし、スイスでの安楽死を希望する日本人に密着することで、安楽死に対する否定的な考えの根拠となる、日本の社会問題が浮き彫りになったと述べる。

日本で安楽死を求めるよりも、社会問題に注力すべき

宮下氏は、日本人で安楽死を求める背景に、次の二つの問題があると述べている。

・日本人の”死”に対する価値観

・出産年齢の高齢化と少子化問題

【日本人の死に対する価値観】

欧米では、”自分の誇りを守るため”といった個人の権利として安楽死を選ぶ人が多いという。

それに比べて日本人は、”周囲に迷惑をかけたくない”といった考えが根本にあり、本当は死にたくなくても、周りに迷惑をかけるのが耐えられないために、死を選択したいと思う傾向にあると宮下氏は語っている。

ここから読み取れるのは、日本人が選択するその”死”には、”本人の意思”が薄れているのではないだろうか。ということである。

周囲の人とのコミュニケーションや繋がりを感じられていれば、日本人の性質上、”自分の意思による死”以外の選択は広がっているように思う。

【出産年齢の高齢化と少子化問題】

また宮下氏は、出産年齢の高齢化が進んだことも、「安楽死」を求める要因に大きく影響していると考えている。

日本では、女性の出産年齢が高齢化している。

その背景としては様々な要因があげられるが、多くは

・女性の社会進出

・経済的な問題

と言われている。

-出産する年齢が上がれば上がるほど、子供が手を離れた頃に、すぐに親の介護が待っている-

つまり、子育てが終わったころにはまた、介護で体力面・精神面・経済面の負担がかかってくる。

そして、その負担から、介護をされる側の気持ちを考える余裕が無くなってしまうという現状が存在している。

そうした状況から、介護をされる側は、介護する側の負担を考え、”迷惑をかけるから”といった理由で安楽死をしたほうが良いのではないか?という考えに至るという。

しかし、これは単純な本人の問題ではなく、日本の社会問題だと宮下氏は考え、日本で“安楽死”を議論するのであれば、こうした社会問題にまず目を向けるべきだと語っている。


こうした背景からも、日本での安楽死は、まだ認められるべきではないと宮下氏は考えている。

【見落としてはいけない社会問題に目を向ける】

「世界中のどこを探しても…」のプロジェクトでも、度々「自殺」の背景にある社会問題を取り上げている。

自殺志願者の心理もさることながら、その心理を作り出す社会的な環境も見落としてはいけない重要な問題であることは間違いない。

こうした社会問題を見落とすことなく、目を向け続ける宮下氏のようなジャーナリストが、今の日本に必須であろう。

彼のような人々が増えることが、日本の社会問題に立ち向かうきっかけになっていくのではないだろうか?

※宮下氏のインタビュー「安楽死は日本人に希望をもたらしてくれるのか」

詳しく内容が知りたい方はこちらへ↓

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56712

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