人形師の世界観~人形の示す生と死~三浦悦子

人々を惹き付ける独特な世界観

彼女は球体関節人形の存在を知り、その魅力に惹かれ、同じ人形作家である吉田良の人形教室に通い始めます。

彼女の作品は他の追随を許さない圧倒的な異才を放つ存在として、瞬く 間にその名を馳せました。

彼女の作りだす作品は、人間の生と死のはざまに存在している美しさと儚さを表現した今までにない感覚の作品を次々と生み出し、それは観た者の心を惹き付けました。

そして、彼女が表現する球体関節人形の少女たちは、自らの意思、つまり自傷行為によるものや、体の一部が欠損していたり、手足のないものや不完全な姿の少女ばかり。

なかには片目が縫われているものや顔に画びょうがいくつも突き刺さっていたり腹部が切り裂かれ、体中つぎはぎだらけの思わず目を逸らしたくなるような、見るに堪えないものも。

そんな痛ましい姿にも関わらず、なぜかその中に人を惹き付ける美しさがあり、彼女の持つ独特の世界観に夢中になる人が続出するのが、彼女の作品の最大の特徴です。

人形師 三浦悦子( みうらえつこ) 公式HP http://dolly.vivian.jp/gsn_doll/

現代人形作家。サディズムと医療機器へのフェティシズムの現れた痛々しくも愛らしい人形を作る。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%B1%BA%B1%D9%BB%D2より引用

不完全な姿でも誇り高く少女たち

これは少女たち自らが、欠損や傷付いていることにより、自らが美しく誇り高き存在であることを確信し、愛おしいと思っているからなのでしょう。

その証拠に彼女の作りだす少女たちはみな、人体が欠損していることを特別な存在であると認識することで その表情はどこか誇らしげにも感じます。

そして、人形というものが『死』と「生」のはざまを表しているように、現代の自殺未遂をする少女や生きることに苦しむ人々の鬱なる感性を人形を通して表しているようにも感じます。

少女を特別なものとすることで、そこに人の生と性、そして死を描く。

つらい過去や苦しい恋、記憶から消してしまいたいような、忌々しい思い出。そんな感情から解放され たいがため自殺をしたり、自傷行為に走る少年少女たちが後を絶ちません。

実際に日本の若年層の自殺率は世界でもトップクラスであり、深刻な問題にもなっています。
しかしながら自殺や自傷行為をする人々は、本当は誰よりも「生きたい」と思い、誰かに助けを求めるためにそういった行為をしているのです。

『しにたいひとは本当は誰より生きたい人』

ですが、この人形たちが表現するものは、心の痛みや苦しみは限界に達することによって負の感情、つまり闇から光へと180度変わっていくだろう。ということを人形の姿を通して表しています。すなわち苦しみや悲しみの先には必ず希望があるということです。

彼女の作品は刺激的で、ときに見る者に畏怖や戸惑いを与え、中には不快感を示す方もいるため好き嫌いが分かれるかもしれません。

しかし彼女の作品は、同じようなトラウマを抱える人々にとってはつらい記憶や苦しい過去から解放してくれるきっかけになり、同じような悩みを抱えた多くの人の心に感動と衝撃を残しています。

(同グロくて、ゴシックな人形の写真集。

僕は人形が苦手だ。夜中に動き出して歩きまわったりするんじゃないかと考えたりするだけで怖気立つ。この写真集の現物の人形を見てしまったらおっかなくて泣いてしまうかもしれない。

三浦悦子人形作品集 聖餐

が、きれいだ。

腐った果実が色彩を増すように、人形に落とし込まれた感情や現実はイマジネーションの枠を抜け出し現実に特異点を創りだす。

腹に詰め込まれた食物を官能的にさらけ出す女性や、頭を切り取られた上半身で無表情に佇 む母親、楽器のボディをもちケースに入っている少女。誰もまばたきせず透き通った瞳でただこちらを見つめている。

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