「なぜ人を殺してはいけないの?」

もし咄嗟にこのような質問をされたらあなたはどのように答えますか?
実は、簡単なようでとても奥深く哲学的であり、答えるのは容易ではありません。

人を殺してはいけない理由
ー哲学的水準からの考察ー

たとえばいらない紙を破り捨てたとします。
それを見て驚く人は恐らくいないでしょう。

しかし同じ紙でも、もしこれが一万円札だったとしたら?
そしてその一万円札を破り捨てたとしたら、見た人はさぞびっくりすることでしょう。

それは 万人の共通認識として、一万円札に価値があることを知っているから です。

このように、人の命の重みや人生の意味を理解できている人は、極端に言うと、1万円札を破り捨てゴミ箱に捨てる行為に抵抗があるのと同じく、簡単に人を殺めることはできません。

しかし逆を言えば、人生の意味を理解していなければ、なぜ人を殺してはいけないのかという答えはわからないのです。これが哲学思考の考え方です。

なぜ人を殺してはいけないのか?
苦しくても自殺してはいけないのか?

この二つは実は同じことを問われています。 ではなぜ、人間は生きなければならないのか? 人生の意味はなにか? 答えられる人はあまり多くはないでしょう。

「善人は殺してはいけない。 だが悪人は構わない」という現代の風潮

現代において「人を殺してはいけない」という道徳は無いに等しいでしょう。
正当防衛で人を殺しても、死刑制度で人を殺しても罪になることはありません。

そして戦争 で人を殺すことも国単位で容認しています。映画の正義のヒーローは大量殺人を犯しても、 正義という名の大義名分があれば拍手喝采を浴びます。

ですから、「人を殺してはいけない」と言うよりはむしろ「罪のない人を殺してはいけな い」と表現する方が適切です。

しかし、この「罪」というのも難しい概念で、単純に「悪くない人を殺してはいけない」とい うことにしましょう。

そうなると「善人を殺すことはいけない。だが悪人、とくに極悪人などは殺してもかまわな い。」というのが現代の主流の道徳になりつつあります。

善悪の基準とは?

しかしこの理論だと、善と悪とはいったいなにか?という問題が発生し、誰を基準にするか?価値観や倫理観の違いによって善悪は変化するので、正しい解答は存在しないでしょう。

進化倫理学において「人を殺してはいけない」と他人に言うのはそもそも愚かなこととされます。

何故なら人間は誰しも本能的に「人を殺したくない」というものを持っているからです。

自分が拳銃を構え、人を殺すシーンを想像して下さい。「戦争における『人殺し』の心理 学」(デーヴ・グロスマン著)によると、人間は本能的に同類を殺すことに強烈な抵抗感を持つ為、厳しい訓練を受けた兵士ですら実際の戦場ではなかなか敵を殺せないといわれます。

そうはいっても実際に殺人事件は頻繁に起こり、罪のない人間が殺されているのが現実 。

このようなケースはたいてい長期間によるストレスにより人間性が歪んでしまったり、倫理 観が崩壊してしまった犯人が多いでしょう。(酒鬼薔薇少年もその1人です)時折もともとそういった部分が欠如したまま成長した人間も存在していますが…

そもそも「人を殺してはいけない」と言うこと自体が「もしかして君はいつか人を殺すので はないか」という不信感を相手に対して露わにしていることと同じです。

つまり 「人を殺してはいけない」という発言は、「人を殺す可能性があなたにはある」といっているようなものである。

酒鬼薔薇事件が起こったときに、大人が見境なく「人を殺してはいけない」と子供たちに言ったことに不愉快感を示したひとりが「なぜ人を殺してはいけないのか」と反撃したのもこのせいだと理解できるでしょう。

明確な答えは存在しないに等しい

「なぜ人を殺してはいけないのか?」という疑問に対する正しい正解は存在しないでしょう。ですが想像して下さい。

もし「自由に人を殺しても罪にならない世界」だったとしたら?

私達は常日頃から、いつ、誰に、どんな理由で殺されるのかもわからず、毎日怯えながら過ごすことになるのは明白でしょう。

それを踏まえた上で、もう一度 「人を殺してはいけないとされる世界」と「自由に人を殺しても罪にならない世界」どちらがあなたにとって住みやすい環境であるかを考えて下さい。

そしてそのときあなたは どう思いましたか?そしてその感じたものが、この質問に対するあなた自身の、 シンプルな答えであると、 (このサイト)sekajyuでは考えます。

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